「ミーハーエンジニアは、メリットしかない」 そう話すのは、「金融をサービスとして再発明する」をビジョンにグローバルで事業を展開するFinTechカンパニー Finatextで新規案件のアプリケーションリーダーを務める山崎蓮馬氏。 新しい技術や興味のある技術にとことんのめり込み、開発チームをリードする彼は、自分自身のことを「ミーハーエンジニア」と称します。そんな彼の類まれな好奇心と行動力は一体どこから来ているのでしょうか。山崎氏のマインドのルーツを紐解いていきます。
自身の市場価値を高めて、金銭的な理由で挑戦を諦める人を減らしたい
—— 山崎さんは、非常に勉強熱心な方だと伺いました。そのモチベーションはどこから湧いてくるのでしょうか?
いくつか理由があるんですが、ひとつは「できないことへの恐怖感」です。「思ったよりできないじゃん」って誰かに言われるのが、ものすごく嫌で。そう思われたくないから、勉強するみたいなところがあります。
きっかけは中学受験。当時は受験を舐めていたので、勉強をまったくしていませんでした。実際に試験を受けてみたら、当然ですけど点数がまるで取れていなくて。仲のよかった友だちから「残念だったね」と言われたのが、本当にショックでした。恥ずかしさとか、悔しさが一気にこみ上げてきたのを覚えています。
—— その原体験があったことで、人の期待値を超えたいと考えるようになったと。
そうですね。あと、「金銭的な呪縛から解き放たれたい」と昔から思っているため、常にアンテナを張って情報をキャッチできるようにしています。
というのも、**僕の家庭はそこまで裕福というわけではありませんでした。**たとえば小学生の頃、友だちがみんなピアノを持っていたので、「僕もやりたい」と言ったんです。でも、「家の床が抜けるからやめて」と冗談交じりに言われて断念しました。
英語ペラペラの帰国子女から「お前、英語できないの?」と言われて悔しい思いをしたこともあります。「そもそも、うち、海外に行ったことないし」みたいな。そういうのって、自分ではどうしようもないことじゃないですか。
そういった体験があったから思うんです。意思決定をするとき、金銭的なボトルネックがあるのは人生においてもったいないって。お金が理由でチャンスを逃すのは嫌ですよね。
そういう人たちを支援するために、お金を稼いで、いつかは給付型の奨学金制度をつくりたいって考えているんです。その夢を実現するには、まず自分の価値を高めないといけないじゃないですか。
フルスタックは当たり前。人の感情を動かすには、期待値を超えるアウトプットが必要だから
—— プログラミングに興味を持ったのはどうしてですか?
大学生のとき友だちに誘われて、プロコン(プログラミングコンテスト)に出るために東京へ行きました。そのとき初めてプロコンに参加したんですけど、まったく解けなくて。でも、世の中には解ける人がいるわけですから、めちゃめちゃ悔しいですよね。それ以降、負けたくない一心でプログラミングに打ち込みました。
—— その負けん気が、エンジニアとしての成長を支えてきたのですね。山崎さんはフルスタックエンジニアとして活躍されていますが、なぜそのキャリアを選んだのですか?
脈絡がないように思われるかもしれないですが、「人の感情を動かすこと」が生きる上ですごく重要だと考えているからです。僕、昔から中二病的なところがあって、趣味で心理学を勉強したりしていました。
その過程で、「人の感情を動かすって、本当に価値があることなんだ」ということに気付いたんです。人の感情を動かすってすごく難しいことなんですよ。たとえば、「いま、喜んでください」と言われても難しいですよね。人の感情は自分の期待値を超えたときに動くものだから。
—— 「人の感情を動かすこと」の手段が、フルスタックであると?
そうですね。僕は、相手の期待値を超えるためにフルスタックなスキルを身につけたんです。フルスタックは特別なものではなくて、やりたいことを実現するための副産物なんですね。
僕はファーストキャリアで金融 ×IT のソリューションを提供しているシンプレクスという会社を選んだんですが、これにも理由があって。プログラミングスキルを磨きたかったのはもちろん、金融業界にも興味があったし、コンサルティング業務もやりたかった。この 3 つすべてに携われる会社がベストだと思ったんです。
話も広がるし、会社にも還元できる。ミーハーエンジニアであることにはメリットしかない
—— Finatext を転職先として選ばれたのはどうしてですか?
VC にいる僕の友だちが、たまたま Finatext の担当をしていたんですね。彼からある日、「Finatext の社長、めちゃめちゃ面白いから会ってみなよ」みたいなメッセージが突然来て。
それで話を聞いてみたら、Finatext が描いているプラットフォーム構想が、金融業界に大きな影響を与えるものだと感じられました。それにメンバーもみんな素敵な人たちで。「この会社で働いてみたい」と思えるような魅力があったんです。
—— 山崎さんは同社で「ミーハーエンジニア」を自称しています。普段はどのようなスタンスで技術習得に取り組まれていますか?
たとえばプライベートでも、そのとき 1 番イケてる言語やフレームワークを使って、よく試験的にプロダクトを作っています。「このフレームワークいいな」「この技術は使いやすい」ということを個人でキャッチアップしているイメージです。
というのも、最新技術にアンテナを張っていれば、いろんな人と繋がることもできるし、仕事にも活かすことができる。月並みですけど、僕は雑学がものすごく好きなんですよ。話のネタになるので。「へえー、そんなことも知っているの!?」って反応してもらえることが嬉しいんです。
技術に関しても「その技術は、こういう特徴がありますよね」と言えると、話も弾みますし、相手に対する理解度も高まります。それに、技術習得をすることで会社のプロダクトにも還元できて一石二鳥なんです。ミーハーエンジニアであることはメリットしかないですね。
—— なかでも、好きな技術領域は何ですか?
フロントエンドの技術がすごく好きですね。なぜかというと、UI/UX やユーザビリティを向上させるうえで、テクノロジーだけじゃなく自分の好きな心理学も活用できるから。
自分が意図して実装した UI でユーザーが思ったとおりに操作してくれるとか、プロトタイプがウケたとか、そういうのが面白い。そこを担うのがフロントエンドだからこそ、惹かれますね。
理想はティール組織。全体の生産性を高めるためならエンジニアの枠にとらわれる必要はない
—— 山崎さんは技術研鑽だけではなく、チームビルディングにも積極的だそうですが、なぜですか?
僕ひとりができることって、たかが知れています。たとえば、僕の生産性が 2 倍になったところで、会社としては 1 が 2 になっただけ。でも、組織全体の生産性を 1.5 倍にすれば、人数分のレバレッジをかけることができますよね。
それって会社としてのアウトプットを最大化するためには間違いなく必要なことですし、誰の仕事と決まっているわけでもない。エンジニアの枠にとらわれず「じゃあ、自分がやるか!」と思って、取り組んでいます。
—— どのようなことに取り組んだのですか?
1 つは、会社の行動規範の変更です。クレドは社員にとって本当に重要なものなので、転職してすぐに「より良いものに変えたほうがいい」と社長に話しました。「変えなくてもいいんじゃないか」という意見もありましたが、僕は行動規範を通じて、みんなに Finatext で働く意義を心に刻んでもらいたいと思ったんです。
それから、**技術選定にも積極的に携わっています。**先ほどの話にも出たとおり、個人でいろいろな技術を試したなかでも、Vue.js というフロントエンドのライブラリが非常に優秀だと思っていました。だから、「次のプロダクトからは、全社的に Vue.js を取り入れていこう」と提案したり。
うちの会社では正当な理由やメリットを説明できれば、社員の意見を積極的に取り入れてくれるんです。
—— 今後、Finatext をどんな組織にしていきたいですか?
個々に意志決定権があるティール組織にしていきたいと思っています。メンバーそれぞれが、自分にできることを見つけて、自主的に研鑽する。そんな、それぞれの細胞がバリューを出せる組織にしていきたい。そうすれば、組織がひとつの生命体になって凄いことが実現できると思っています。
だからこそ、僕は自走できる人と一緒に仕事がしたい。論理的に考えられて、自分には何が必要なのかを発見できて、ちゃんと事業にコミットできる人は、良い意味で僕も危機感を覚えるので。どんなにこちらで成長機会や環境を用意しても、しっかりと成長曲線を描けるかどうかは本人の意欲次第ですから。ぜひ僕を脅かすような人にお会いしたいですね。