企業内に IT 部門を持つ内製化の動きが進む昨今。しかし、経営陣がデジタルの本質やエンジニアを理解できていないが故に、社内で受発注の関係性が成立してしまったり、エンジニアは外注をコントロールするだけの存在になってしまうことは少なくない。 エンジニアは企業との従来の関係性から脱却して、自身の価値を再定義するべきなのだが、具体的にどのようなキャリアの描き方があるのだろうか。プロジェクト単位でいろんなエンジニアと連携しながらオリジナルなキャリアを描き、業界や日本にインパクトを与えている、フューチャーのTechnology Innovation Group シニアアーキテクトの壺屋翔氏にお話を伺った。
レガシー企業から事業会社まで、裁量と責任を持って取り組む
—— 壺屋さんは、これまでどんなプロジェクトに携わってきたのかを教えてください。
2009年に新卒で入社後、最初に携わったのがコンビニエンスストアチェーン様の基幹システム刷新プロジェクトでした。これは、数十年間業務を支えていたホストコンピュータを撤廃してオープン化されたシステムに置き換えることで、ビジネスの急激な変化に追従し攻めに転じるためのアーキテクチャーを実現するというもの。
僕はIT未経験で入社したのですが、このプロジェクトで設計やコーディング、保守運用までを一気通貫で担当し、大企業の根幹を変えるというダイナミックさを経験しました。
次に携わったのが、日本最大手のマーケティング企業様の根幹である、顧客分析基盤を構築するプロジェクトです。要件定義から設計、開発、テストまで、サブPLとしてすべての工程に携わったのですが、ここで大きな挫折をしました。
最初のプロジェクトでそれなりにモノ作りができる気になっていたのですが、実際はまったく何もできないことを思い知らされました。要件定義では顧客に納得してもらえるような進め方ができず、たとえば先輩が1日でできることが、僕は何週間もかかるような状態で。
周りの助けがあってプロジェクトはやり切ることができましたが、実現したいサービスやシステム仕様がどう作ったらいいのかが分からないことや、自分の出来なさ具合が本当に悔しかった。それと同時に、このまま10年経験を積んでも、10年上の先輩と同じ領域に到底たどりつけないと素直に思いました。
だからこそ、絵に描いた餅をきれいなパワーポイントで書くだけではなく、もう一度改めて技術を学びたいと思い、当時トップレベルの技術者が支援していた、グループ会社の東京カレンダーのプロジェクトに挑戦させてもらいました。
この現場で、今までとは違う開発手法や思考を実践から学び、スキルアップしながら自分の力量を肌感で把握できるように。視野は大きく広がったと思います。
そこで約1年強アジャイル開発でコーディングをし続け2015年頃、フューチャーに最先端テクノロジーを扱うプロフェッショナル部門の、Technology Innovation Groupを新設するという話を聞きました。僕はぜひ挑戦させて欲しいと自ら手を挙げ異動。
ここは、各プロジェクトへのテクノロジー支援コンサルティングや、品質・生産性向上、最先端・先進的テクノロジーの検証、ソリューション企画・開発などを横断で行う、専門性の高い部門です。 異動してからは、さまざまなプロジェクトを支援したり、クライアントの品質向上プロジェクトなどをダイレクトに実行したりなど、今まで以上に大きな裁量と責任を持って行動するようになりました。
しかも、このチームには社内外を見渡しても圧倒的に優秀な人たちが集まっていて、新卒1年目でも技術レベルがトップクラスのメンバーもいます。社歴や年齢に関係なく、心からリスペクトできるメンバーが集まってくれていることが嬉しいですし、プロジェクトを通して日本のあらゆる産業を変えている実感も得られるようになりました。
20年以上続く、プロジェクト型の開発スタイル
—— フューチャーで働くことの面白さは何でしょうか。
フューチャーは創業以来、エンジニア組織にヒエラルキーがなく、過去の経験値や年次に影響されないチームを組んでいます。実力主義だから、入社1年目でも実力があればリーダーになれる。
本質的ではないと思えばすぐに意見を言えますし、同じ人が上流から下流まで一気通貫でやります。根回しのための社内向け資料を作る必要もないし、変なしがらみもありません。しかもピラミッド型の組織ではないから、本当に裁量と責任を持ってプロジェクトを遂行できるんです。
この文化は入社したときから当たり前に根付いていたので、どの会社でも普通のことだと思っていました。でも、2018年に一橋ICS主催のデジタルトランスフォーメーション・フォーラムに参加して日本を含む世界各国の事例を学んだ際に、初めて「フューチャーは世界的にも先進的で優位性のあるスタイルを創業時から実現しているんだ」と客観的に気付きました。
しかも、フューチャーが手がけるのは、業界にインパクトを与えられるような案件や、フューチャーじゃないと実現できないような難しい案件です。すでに世の中に存在するものではなく、まったく新しい価値を生み出す案件に挑戦するため、本当に業界や日本、世界にインパクトを与えられる。これは、エンジニアとして大きなやりがいにつながっています。
また、プロジェクトごとに自分たちが働きやすい環境を作っていくので、それぞれにプロジェクトの進め方も文化も違います。だから、プロジェクトが変われば全く異なる経験をすることができます。重厚長大な企業の数十億円規模のウォーターフォール型プロジェクトから、事業会社のサービス創出・アジャイル開発まで経験できるのは、コンサルタントとしてもエンジニアとしても大いに視野を拡大することができると考えています。
世界的にも最先端の課題に取り組むフューチャー
—— 壺屋さんが現在携わっている案件について教えてください。
現在は、鉄道会社様のデジタルプラットフォームサービスの創出支援プロジェクトを担当しています。これは、沿線住人の方たちにより豊かな暮らしをしてほしいというコンセプトをもとに、地域のさまざまなサービスを連携する新事業。顧客内の既存サービスだけではなく、グループ外のサービスや、地域のサービスをオープンにつなげていくことで、人々のリアルな生活を変えていけることが非常に面白いです。
なにより、鉄道インフラや小売、流通、不動産といった人々における無くてはならないサービスを提供されている鉄道会社のデジタルシフトを支援できることが嬉しいですし、僕もその沿線で生まれ育ったから価値あるサービスに拡大していきたい。そんなご縁もありプロジェクトご支援を始めてから、この沿線に家を買いました(笑)。
—— 鉄道企業様のデジタルシフトの一環なのですね。昨今、デジタルシフトが潮流ですが、引き合いは多いですか?
ありがたいことに、引き合いはかなり多いです。クライアントの業務のうち、ほんの一部でもデジタルシフトしていくことを皮切りに、これまでの知見から業務プロセスや働き方などを丸ごと変えるような提案や支援をしています。
しかし、本当にデジタルシフトによって変化をもたらすなら、一社を変えるのではなくてサプライチェーン全部をつなげて業界全体を変える必要があります。その最先端で業界から日本を変えるにはどうしたらいいのかを考え、実装まで自分たちでできるのはとても面白い経験だと思っています。
日本は、少子高齢化に伴い、労働力人口不足や介護における課題など、グローバルで見ても今後他国が追従してくるであろう最先端の課題を抱えている国です。それらの課題を、裁量と責任を持って解決につなげていけるのは、他にない魅力ではないでしょうか。
だから僕は、世の中の多くのエンジニアの方に、フューチャーならプロジェクト型で自由度があって、技術的制約もなく特定の事業領域に限定されない環境があることを伝えたい。単なる技術要員ではなく、裁量を持って本質的な事業づくりやダイナミックな業界刷新を、より多くの仲間と一緒に実現させ、社会を変えていけたら嬉しいです。