みなさま、はじめまして。近藤 雅章(こんどう まさあき)です。
私は2002年にフューチャーに新卒入社して以来、金融・製造・流通・不動産など、複数業界のITコンサルティングに従事してきました。これまで幅広い業界のプロジェクトを経験する中で、お客様と新しいサービスを検討し、実現に必要なシステムを構築、場合によってはハードウェアを設計・開発することもありました。
また、お客様の未来価値を最大化するために、新しい技術を使うケースも多く、どのプロジェクトをとっても難度が高い。その分、社会への影響も大きく、プロジェクトの成果が新聞や雑誌に掲載される嬉しい経験も多くしてきました。
一方で案件の難度が高いということは、品質管理・品質保証がとても重要になります。現在、私はFuture Value Groupという全社横串の部署に所属しています。プロジェクト成果物の品質・生産性を高める活動、ガイドライン策定、教育、プロジェクトのモニタリングや各種レビューなどにもチームで取り組んでいます。
難度が高い案件ばかりなのに、フューチャーのプロジェクト推進が順調なのは品質に対するこだわりがあるからです。今回は、その品質への考え方と、その考えに至った経緯、現在取り組んでいることについてお話できればと思います。
目次
- 大規模プロジェクトで気づいた壁とそこから得た学び
- モニタリングとして実行した内容
- プロジェクトの振り返りから得られた更なる示唆
- 品質に対する考え方と現在取り組んでいること
- 最後に
1.大規模プロジェクトで気づいた壁とそこから得た学び
私が大手企業の全社業務改革・システム改革の案件に参画していた時の話です。私はプロジェクト全体の品質・進捗マネジメントを担当していましたが、当時とても苦戦していました。
プロジェクトメンバーの数が数百名以上だったからです。
品質・進捗マネジメントの対象が数名のチームの場合は、日々自身でチームメンバーの成果物を確認し、品質・進捗共にマネジメントすることができます。ですが、プロジェクト全体がマネジメント対象だったため、自身で数百名以上の成果物を日々確認することは現実的には困難でした。
今までのマネジメントスタイルの延長では、プロジェクト全体の品質・進捗をマネジメントすることは難しいことを痛感した出来事です。
自分自身が全ての成果物を確認することができない中、複数のチームの品質・進捗をマネジメントするにはどうすると良いか?
各チームのリーダーに任せつつも、任せきりにならないような工夫をしていきました。
2.モニタリングとして実行した内容
実際に行った工夫は以下の3つです。
- マネジメントの対象を「重要度の高い領域」と「重要度が高くないがボリュームが多い領域」に要素分解し、ボリュームが多い箇所は、できるだけ効率的にマネジメントする。
- EVM(※)や品質指標などのメトリクスを活用し、それらのメトリクスを人手を介さずに算出できるようにする。その上で、日々状況をモニタリングし、異変があれば早期に対処する。
- ボリュームゾーンを定性/定量の両面で効率的にマネジメントし「重要度の高い領域」を深く確認する時間を創出する。
日々の状況をモニタリングする上では、人手を介さずにEVMを算出する方法も活用してプロジェクト状況の把握を行っていきました。
※EVM(Earned Value Management):PMBOKでも説明されている有名なプロジェクト管理技法のこと。人手を介さずにEVMを算出する方法は、Future Tech Blogにも公開中。
3.プロジェクトの振り返りから得られた更なる示唆
前述の大規模プロジェクトが終わった後、実績に基づいて振り返りを行いました。日々のマネジメントに対する工夫は行っていたものの、プロジェクト計画時点に遡るとどのような工夫を行うことができたのか、自分自身で答えを持っておきたかったためです。
当時収集していた各種メトリクスを基に、それぞれのメトリクスの前後関係を紐解き、後工程の結果に影響する先行指標となるようなメトリクスがないかを分析しました。加えて、別のプロジェクトの有識者からも実績をもらい、合わせて分析をしていきました。
その結果として、「プロジェクトの成果は、プロジェクトの前提や前工程の結果に大きく影響を受ける」ことが統計的にも優位であると分かりました。
図1:分析資料抜粋(「プロジェクトにおける前提」が成果に与える影響の分析)
これらの統計的な分析を基に、大規模プロジェクトにおけるノウハウをまとめ、社内で勉強会を開催し共有を進めていきました。勉強会がきっかけとなり、現在では全社横串で品質・生産性を高める活動を推進しています。
4.品質に対する考え方と現在取り組んでいること
全社横串で品質・生産性を高める活動を行う上で重視していること。それは、大規模プロジェクトでの経験を踏まえ、全社における「重要度が高い領域」は何か?ということを常に意識し続けることです。
例えば、システム開発において後工程になればなるほど、対応コストが増加することが知られています。つまり、前工程の品質が重要だということです。
図2:工程別の課題対応コスト比率(Software Engineering Economics. Prentice-Hall を元に当社作成)
それでは、「設計」といった前工程自体の品質を高めるためには、何が重要になるのでしょうか?
まずは「計画/予算」です。そもそも計画や予算自体に考慮が不足していると、プロジェクトが立ち行かなくなるためです。
加えて「アサイン/役割」も重要です。しっかりとした計画/予算が準備されていたとしても、実現するためのメンバーがアサインされていない場合や役割が不明確な場合は、やはりプロジェクトが立ち行かなくなります。
公表されている統計情報や論文、社内における過去のプロジェクト実績を分析しても、計画/予算、アサイン/役割、設計といった要素が後工程の品質に与える影響が大きい「重要度が高い領域」ということが言えました。設計の品質を高めることに重きを置き、そのためのガイドライン策定や教育、各種レビューに取り組んでいます。
また、「重要度が高い領域」以外に対してもモニタリングやレビューをしっかりと行い、異変があれば早期に対処することも重要です。それぞれのプロジェクト特有のファクターもありますので、そのプロジェクトの「重要度が高い領域」は何か?も同時に深く考え、品質・生産性を高める施策を個々のプロジェクトの計画に織り込む活動も行っています。
5.最後に
今回は品質に対する考え方と、その考えに至った経緯、現在取り組んでいることについてご説明しました。改めてフューチャーは、顧客の未来価値を最大化することをミッションとして、先端技術を活用したコンサルティングを行う会社です。
難易度が高いプロジェクトが多く、品質管理・品質保証が重要となる。
そのため前述した取り組み以外にも様々な施策に取り組んでいます。経営層の品質・生産性に対する理解も深く、品質・生産性を高める活動を行いやすい環境です。
品質・生産性を高める活動を行っている方、興味がある方は、是非フューチャーに参画いただければと思います。
引用:未来報